氷砂糖
舌の上に小さな透明な塊を乗せる。どこかひんやりとした甘さが広がっていく。
小さく苦笑する。
冷たいだなんてのは気のせいだ。先ほどまで缶詰やらを詰め込んでいる棚に入っていたのだ。室温と大差ない場所に押し込められていたのだ。
それでも、なぜ舌の上で少しずつ小さくなっていくこの塊を冷たいと感じるのだろう。
名前のせいか。
「氷」という文字が入っているせいか。
気のせいだというのに、なぜ消え行く最後までこの塊は冷たく感じるのだろう。
たんなる砂糖の塊だというのに。
ただ甘いだけの塊だというのに。
口内の熱に溶けていく塊だというのに。
なぜ。
柔らかくないこの塊は。
刺々しくないこの塊は。
色のないこの塊は。
冷ややかな甘さを伝えるのだろう。
カカオのような苦さもなく。
バニラのような香りもなく。
ただ冷たく甘いだけ。
それだけなのに。
気がつけば手を伸ばし、それは舌先に触れる。
そして、それは、なによりも心地よい。
〈了〉
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